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コース2)意外な歴史を知る神社仏閣巡り

パワースポットの来宮神社だけじゃない

樹齢2000年の楠のあるパワースポットとして近年、人気が出た来宮神社は、土日には参拝客で賑わう。また、温泉神社として知られる湯前神社は、江戸時代には将軍が住む江戸城まで桶で湯を運んだことにちなむ「湯汲み道中パレード」で知られる。その一方、市街地には歴史ある神社仏閣がひっそりと佇んでいる。

駅前の平和通り商店街を抜けて下っていくと、右手に医王寺が見える。臨済宗妙心寺派の寺で、かつては200mほど下にあったが、明治中期、ここに移った。旧寺跡にはかつての名残り「一本桜」が残っている。

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医王寺の門前の六地蔵(左) モダンな本堂(右)

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かつて医王寺があった名残りの一本桜。江戸時代はここから下のみが温泉街だった。

咲見町の信号を右折し登っていくと、右手に小さな神社が見えてくる。この「藤森稲荷神社」は徳川三代将軍将軍家光が、湯殿屋敷の鬼門除けとして創建させたもので、寄進者を示す古い石が並んでいる。ここには藤棚があり、高台で海も見渡せるので、隠れスポットと言える。

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ひっそりと佇む藤森稲荷神社。社名を刻む石碑は、海軍中将・東郷吉太郎の書によるもの

東郷吉太郎の叔父は、日本海海戦でロシア軍を打ち破った海軍大将・東郷平八郎

道路を渡り階段を下って細い路地を進むと、温泉櫓の近くに「小澤(こさわ)來宮弁財天」の小さな祠がある。なお、ここを左に下ると、熱海で唯一、温泉卵(蒸し卵)ができる施設「小澤の湯」に出る。かつて自噴していた源泉の跡地「熱海七湯」の一つで、今は地下から汲み上げている。

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小澤来宮弁財天(左) 温泉卵で人気の小澤の湯(右)

稲荷を左手に見て路地を進み、さらに細くなる路地を左手に下がっていくと、温泉神社こと「湯前神社」に出る。普段は静かな神社だが、10月の例祭では、江戸時代には将軍家綱が住む江戸城まで桶で湯を運んだ行事を再現する「湯汲み道中パレード」で、市街が賑わう。なお吉宗の時代には船で運ぶように変わった。

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湯前神社の鳥居と本殿

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境内に引いてある温泉(左) 例祭の夜の社(右)

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例祭の夜は賑わう

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例祭で用いられる湯桶(左)と湯汲みの想像図(右)

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湯汲み道中パレードの芸者衆(左)と湯桶をかつぐ集団(右)イベントなので想像図と異なるのはご愛嬌

湯前神社のある通りには、「大湯」と木造の温泉宿「日航亭」がある。大湯はかつて間欠泉が吹き出ていた熱海温泉の元湯で、まず先に将軍の湯殿に使われ、おこぼれを温泉宿が使っていた。この間欠泉は、関東大震災で絶えてしまい、現在は地下から汲み上げて再現している。なお現在、熱海で自噴している源泉は、伊豆山神社の「走り湯」のみ。

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間欠泉を再現した大湯(左) 木造旅館で立寄湯ができる「日航亭」(右)

湯前神社のある通りの1本西には、寺が2軒、並んで建っている。向かって右側が浄土宗の誓欣院。天正17(1589)年の開山で、万治3(1660)年の大火で焼失し、寛政9(1757)年ここに移転して再建。徳川将軍家の菩提寺である芝増上寺との関係が深く、本堂屋根には「葵の御紋」が用いられ、また境内にはあじさいが植えられていて、樹齢800年の「子宝の松」が有名だったが2017年に伐採され、今は二代目が育っている。

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山門と糸川に架かる赤い橋(左) 門前の六地蔵(右)

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屋根瓦の三つ葉(左) あじさいの季節の境内(右)

向かって左側は、臨済宗の妙心寺派の、通称「温泉寺」または「温泉禅寺」。開山は約600年前で、樹齢500年以上のソテツや、運慶作の不動明王像(一般非公開)など歴史が息づいている。

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温泉寺の門前(左)と境内の六地蔵(右)

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地蔵堂とソテツ

坂に登っていくと、右手に日蓮宗の大乗寺が見えてくる。日蓮が伊東に流されるときこの辺りを通った際、給仕をした縁で、真言宗だった金剛院を日興上人が日蓮宗として開山とした寺だと伝わる。明治期の遊芸師匠で熱海花柳界の始祖とされる坂東三代吉の菩提寺であることから、芸事に欠かせない三味線の革やバチ、扇子などに芸者衆が感謝し、お炊き上げをする「撥扇塚(はっせんづか)供養祭」が4月に催されることでも知られる。

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大乗寺の門前(左) 撥扇塚と日蓮上人像(右)

そのまま坂を上って鉄道のガードをくぐると、来宮神社に到達する。樹齢2000年の大楠で知られるパワースポット。願い事を口に出さず幹を回ると願い事が叶い、幹を1周すると寿命が1年伸びるという言い伝えが話題となり、第二楠とともに手で触れて願掛けができる。また、例年の節分の豆まきは芸能人らを招いて催され、豪華景品が当たることから、大いに賑わう。

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記念撮影で賑わう鳥居前(左) 参道の第二楠脇にある忠魂の碑と日露戦争の戦勝記念に奉納された砲弾(左)

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本殿とその左手奥の大楠(左) 境内の落ち葉を集めて描かれた社紋の猪目(左)雑誌等でハート形と誤解されているが正しくは猪の目(足)の形

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大楠の幹を周る順番を待つ人たち(左) 近年、祠と周囲は整備され、夜間はライトアップされるようになった(中央と右)

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